「106万の壁」撤廃!?「130万の壁」,「103万の壁」引き上げとの関係も整理

自由研究

こんばんは。

2024年12月10日、社会保障審議会で106万の壁撤廃で大筋合意したとのニュースがありました。

正直、この関連のニュースは意味がよくわかっていないので、調べてみました。

大変なボリュームになってしまったので、20分くらいを時間とって腰を入れて読んでください。

103万の壁引き上げについては以前にまとめた記事があるのでそちらをご参考にしてください。

106万の壁とは

被扶養者(パート主婦など)がアルバイトで働く際に、社会保険上の扶養を外される目安が年収106万円であることから「106万の壁」と言われます。

年収106万を超えて社会保険上の扶養を外されると、勤務先の社会保険への加入し、社会保険料を納める必要が出てきます。社会保険料とは健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料などの総称で、ザックリ言えば税金の兄弟のようなものです。多くの場合で税金と一緒に給料から天引きされます。

そのため「107万稼いだ人」の方が「106万稼いだ人」よりも社会保険料が天引きされる分、手取りが減るという現象が起こります。詳しい計算式は割愛しますが、だいたい15万円くらい減ります。1万円多く稼いでしまったばかりに、15万手取りが減るのは理不尽ですよね。これは働き控えを招きます。

厳密な条件と「130万の壁」との関係

ここまで便宜上「106万の壁」という言い方をしてきましたが、社会保険に加入する条件は、厳密には年収「106万円」を超えることではなく、以下の5つの条件に該当することです。(2024/12/10時点)

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 賃金が月額8.8万円以上
  3. 雇用期間の見込みが2カ月以上
  4. 学生ではない
  5. 事業所の従業員数が51人以上

極端な例ですが、毎月8.8万円ピッタリ稼いだとすると年収105.6万円となり、106万は超えていませんが、月額8.8万円以上の条件は満たすため、社会保険に加入する必要があります(他の条件も全て満たしていることが前提の話です)。つまり厳密には「106万の壁」ではなく「月額8.8万円の壁」なわけですが、わかりづらいので「106万の壁」と呼びます。

5つの条件をすごくザックリまとめれば、学生ではなく、チェーン店などの大企業でアルバイトをしていて、年収106万以上稼いでいる人は社会保険に加入する必要があります。

これに該当しない人(大学生、従業員が50人以下の中小企業でアルバイトをしている人など)は106万を超えても社会保険に加入する必要はありませんが、130万円を超えた場合には、これらの人も社会保険に加入する必要があります。これが「130万の壁」です。

つまり、たくさん稼ぐと「106万の壁」か「130万の壁」どちらかで必ず社会保険料の壁に引っかかるようになっています。

「106万の壁」撤廃!何が変わるの?

2024年11月9日に「106万の壁」撤廃というニュースがありました。

これは「106万の壁」の5つの条件のうち、「②賃金が月額8.8万円以上」「⑤事業所の従業員数が51人以上」の条件を撤廃するというものです。「月額8.8万円」の基準がなくなるので、「106万の壁」撤廃と言われます。

「106万の壁」撤廃というと106万を超えても手取りが減らないポジティブなニュースかと思いましたが、そんなことはありません。簡単に言えば「106万の壁」から「週20時間の壁」に名前が変わりますという話です。

「②賃金が月額8.8万円以上」が撤廃されても「①週の所定労働時間が20時間以上」は残るので、1ヶ月4週としてざっくり計算すると時給1100円以下の人は、年収106万に満たなくても週20時間以上働けば社会保険料を納めないといけなくなります。

特にしわ寄せを受けるのは従業員が50人以下の中小企業でアルバイトをしている人たちで、これまで130万まで社会保険料を払わなくてよかったのが、130万に関係なく週20時間以上働いたら社会保険料を納めなければいけなくなります。

強いて恩恵を受ける人がいるとすれば、時給1100円以上の人たちですが、その恩恵とは「週に数時間多く働けるようになる」というもの。誤差の範囲と言っていいですし、そもそも時給1100円以上の人は全国で見れば少数派です。都心の人か、夜勤、水商売、きつい仕事などに限られます。

日本全体で見れば、「106万の壁」撤廃によって「新たに社会保険料を納めないといけなくなる人」の方が圧倒的に多いです。

少子高齢化を考えれば仕方のないことですが、国はとにかくより多くの人に社会保険料を払ってもらおうと画策しています。

「103万の壁」引き上げとの兼ね合いは?

せっかく「103万の壁」引き上げで手取りを増やそうとしているのに、「106万の壁」撤廃でみんなに社会保険料がかかるようにするのはおかしいだろうと批判が集まっています。そりゃそうだ。

103万の壁との兼ね合いは現在も、国の頭のいい人たちが検討中ですが、2024年12月6日のニュースによると、厚生労働省は企業側の社会保険料の負担割合を増やす案を示したようです。

通常、社会保険料は「労働者」と「雇用している企業」が折半で納めていますが、この割合を企業側に多く出させることで労働者の負担を軽減しようという案です。

パート労働者の厚生年金保険料、企業の負担増やせる特例は「年収156万円」まで…厚労省が提示へ
【読売新聞】 厚生労働省は、パートなど短時間労働者の厚生年金の保険料について、会社側の負担割合を増やせる特例制度に関し、年収156万円(月収13万円)未満を対象とする方向で検討に入った。「年収106万円の壁」対策の一環で、保険料支払

確かにこれなら負担は軽くなることが予想されます。

しかし、106万の壁撤廃によって「新たに社会保険料を納めないといけなくなる人」にとっては、そもそもなかった負担が軽くなるという話なので、マイナスであることには変わりません。

恩恵があるのは、すでに社会保険料を納めていて、なおかつ年収が156万円以下の人に限られます。例えば最初に例に挙げた、うっかり107万円稼いで15万引かれてしまったような人たちで、どう考えても少数派です。

「働き控えを解消する」という観点では、15万よりは引かれる額が少なくなるのでいい着眼点かもしれませんが、複雑にして煙に巻こうとしている感も拭えません。例えば「負担を15万から3万に減らしておいたから、どうぞもっと働いてください」と言われても複雑な気がします。

ただ、社会保険料が増えるのは社会の構造上避けられないことで、少しでも労働者の傷を浅くしようと考えてくれているだけ日本は恵まれているかもしれません。

他に代替案を出せと言われても無理なので、この難題に取り組んでくれている国の頭のいい方々へのリスペクトの気持ちは忘れてはいけません。

まとめ

「106万の壁」撤廃と「130万の壁」「103万の壁」引き上げとの兼ね合いなど、調べてみましたが、今の日本はなかなか厳しいことがわかりました。

2025年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になります。するとほとんどの人は医療費が1割になるので、より多くの社会保険料が必要になります。

このことからも、より多くの人から社会保険料を徴収しようとする流れはもはや止められないと言えるでしょう。

不満感はありますが、愚痴を言っても始まりません。前を向くしかないのです。

取られる以上に稼ぎましょう。

国への不満を垂れ流すだけでなく、節約、労働、資産形成など自分にできることから頑張っていきましょう。

続報があれば随時、加筆修正していきますので、読んでいただけると幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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