こんにちは。今日は最近読んだ本の紹介です。
呉勝浩(ご かつひろ)さんの「爆弾」という本です。
- 「第167回直木賞」候補
- 「このミステリーがすごい!2023年」1位
- 「週刊文春ミステリーベスト10 2022年」4位
- 「ミステリが読みたい!2023年」1位
本屋さんのおすすめコーナーで「このミステリーがすごい!2023年」1位と見かけて読んでみました。
あらすじ
東京、炎上。正義は、守れるのか。
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。
感想
レスバつよつよホームレス vs 警視庁
人間の黒い感情の表現がとても上手で、読んでいていい意味で気分が悪くなる作品でした。
ホームレスのスズキタゴサクは話術がとにかく絶妙です。
爆弾を仕掛けた場所を聞き出すために取り調べをしますが、スズキタゴサクはくどくどと中身のないことをずっと話していていると思えば、突然人間の本性に迫るようなことを言います。
読んでいるうちに自分が対面しているような気持ちになってきて、スズキタゴサクの不気味さがより引き立ちます。
本作で私が特に印象に残ったのは「感覚の言語化が的確である」という点でした。
スズキタゴサクは「テレビで見る高校野球や近所の公園で遊ぶ子供の声が苦手」と言いますが、その理由は自分にはもう未来の可能性がないのに対し、高校球児や子供たちには未来の可能性に満ちているからだと言います。
その様子を「溢れんばかりのエネルギーを爆発させている」、「命の咆哮」などと例えており、読んでいてすごくしっくり来ました。私も高校野球を見るのは好きですが、その理由は可能性のエネルギーを感じられるからなのかもしれません。
これはほんの一例ですが、「爆弾」は感覚の言語化が鋭いです。それでいて人間の本性を鋭く言語化してくるので気分が悪くなります。
落ち込んでいる時に読むと余計に落ちそうなので、心身ともに健全な時に読むほうがいいかもしれません。
まとめ
風刺が効いていてキツイ部分もありますが、共感できるので自分の中にも闇を感じました。
登場人物たちに感情移入しながら、人間の闇を感じて読むと面白いと思います。
つい最近、続編が発売されたとのことなので、折を見てそちらも読んでみたいと思います。
以上、「爆弾」でした。
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